「そんなにお金貯めて、どうするの?」
2年ほど前だったと思う。わが家の資産が3000万円に届きそうになったころ、妻からそう言われた。
正直、そのときの僕は少しイラッとした。
「えっ、どうするって……」
転職をして収入が減り、お金に対する不安を強く感じるようになった。それから資産運用を始め、家族にも協力してもらいながら節約を続け、ときには「そこまでやる?」というくらいケチってきた。
将来が不安だった。老後も不安だった。だから必死になってお金を貯めてきたのだ。
それなのに、「そんなにお金貯めて、どうするの?」と言われても、当時の僕にはその意味がよく分からなかった。
資産1億円あっても「あるのもないのも同じ」
昨日、YouTubeとXで話題になっていた婚活の動画を見た。
資産1億円を持つ33歳の男性が婚活のプロに相談するという内容で、かなり刺激的な言葉が飛び交う。正直なところ、炎上するところまで計算して作っているんじゃないかと思いながら見ていた。
ただ、一つだけ妙に耳が痛い話があった。
男性は「資産1億円あれば家族を守れる」と話す。
それに対して婚活のプロは、パートナーが自由に触れず、家族のために使うかどうかも本人が決めるお金なら、女性からすれば「あるのもないのも同じ」「意味のないお金」だという趣旨の話をしていた。
なかなか強烈な言い方である。
でも、その言葉を聞いた瞬間、僕は2年前の妻との会話を思い出した。
「そんなにお金貯めて、どうするの?」
ああ、もしかすると妻が言いたかったのは、こういうことだったのかもしれない。
「そのお金、私たち家族は使えるお金なの?」
「家族のために貯めている」は、僕だけの理屈だったのかもしれない
僕は定期的に現在の資産額を妻に伝えていた。
「今これくらいになったよ」
資産が増えれば、当然妻も安心すると思っていたし、僕自身も家族のためにやっているつもりだった。
ただ、振り返ってみると、そのお金をどう運用するのか、どこまで増やすのか、いつ使うのかを決めていたのは、ほとんど僕だった。
資産額が増えることがうれしくて、他人の資産額を見ては「もっと増やさなければ」と思うこともあった。
でも家族からすれば、もうすぐ3000万円という数字を聞かされても、そのお金を使って何かが変わるわけではない。
欲しいものを我慢し、旅行を我慢し、やりたいことまで我慢して、それでも証券口座の数字だけが増えていくとしたら、それは本当に「家族のための資産形成」なのだろうか。
家族のために貯めているつもりが、いつの間にか「資産を増やしたい僕」のために家族が協力している状態になっていたのかもしれない。
妻の言葉には、そんな違和感も含まれていたような気がする。
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それでも3000万円までは貯めたかった
だからといって、僕はすぐに「よし、お金を使おう」とはならなかった。
ここは自分でも面倒くさいところなのだが、どうしても3000万円というラインだけは超えたかった。理屈ではない。
ここまで走ってきたのだから、3000万円という数字だけは見てみたい。完全に僕のエゴだったと思う。だから、そこだけは押し通した。
その代わり、3000万円を超えたら、資産額を誰かと比べながら走るレースからは降りようと決めた。
5000万円、7000万円、1億円。
上を見ればキリがないし、そこを目指すために家族との今を削り続けるのであれば、そもそも何のために資産形成を始めたのか分からなくなってしまう。
「家族のために貯める」から「家族のために使える」へ
今でも投資は続けているし、資産が増えるとうれしい。
でも、以前とはお金に対する考え方が少し変わった。
子どもが「やってみたい」と言った習い事があれば、できるだけやらせてあげたい。欲しい楽器があるなら買ってあげたい。家族で行ってみたい場所があるなら旅行にも行きたい。
食べたいものだけではなく、これからは着るものや住む場所についても、家族が「こうしたい」と思ったときに、惜しみなくお金を出せる存在でありたいと思っている。
もちろん、何でも好き放題に使うという意味ではない。
僕にとって3000万円は、将来への不安を完全になくしてくれる金額ではないけれど、「ここまで準備したのだから、少しくらい今のために使っても大丈夫だ」と思わせてくれる土台にはなった。
だから今は、資産を増やすことだけではなく、貯めたお金を家族の人生に戻していくことも資産形成の一部なのだと思っている。
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貯めた金額より、「何に使ったか」を残したい
あの動画の「あるのもないのも同じ」という言葉には、今でも少し抵抗がある。
将来のために貯めているお金には意味があるし、いざというとき家族を守ってくれる資産の価値まで否定する必要はないと思う。
それでも、耳が痛かった。
どれだけ大きな資産を築いても、家族がその恩恵を感じられず、使うかどうかを決めるのが自分だけなら、それは本当に「家族の資産」と呼べるのだろうか。
2年前、妻に「そんなにお金貯めて、どうするの?」と聞かれたとき、僕はその答えを持っていなかった。
今なら、少しだけ答えられる気がする。
将来の家族を守るために貯める。でも、今の家族を幸せにするためにも使う。
資産形成を始めたころの僕は、家族のためにお金を貯められる人になりたかった。
これからはもう一つ。
家族のために、貯めたお金を惜しみなく使える人でもありたい。

