今でも忘れることができないのが、今の会社に転職してきたときの『初ボーナス』だ。
35歳で転職したとき、最初にもらった額面8万円のボーナス明細を見て、一瞬頭が真っ白になった。
「バイト? もう30代だよ僕。この先どうするの?」
新卒のころにもらったボーナスより少なかった。何より最初に思ったのは、「家族にこんな明細、見せられない」だった。
結局、妻にはそのまま明細を渡した。
「まぁ最初だから仕方ないよね」そう言ってくれたけれど、僕の中では何かが大きく揺らいでいた。
それまで僕は、会社員というものをかなり妄信していたのだと思う。
普通に頑張れば普通に評価される。仕事ができるようになれば、いつかスポットライトが当たり、それと一緒に給料も上がっていく。
でも、現実はそんなに単純ではなかった。
今振り返ると、あのとき怖かったのはボーナスが少なかったことだけではない。
自分と家族の生活を支えるお金を、会社一社に依存していたことが怖かったのだ。
会社が「これがあなたの評価です」と決めた金額を受け取るしかない。それが少なくても、自分ではどうすることもできない。
だから僕は副業を始めた。
ブログで最初に稼いだお金は、たった1円だった。
でも、Googleアドセンスの画面に表示された「1円」という文字を、今でも覚えている。
会社の肩書も関係ない。上司の評価も関係ない。
「何者でもない自分が、自分の手で稼いだ1円だ」そう思った。
ちなみに当時は名古屋名物のあんかけスパにハマり、週5で食べながらブログを書いていた。副業にはまったくつながらなかった(笑)。
ただ、一度だけ地元のテレビ番組から出演オファーが来た。顔出しができず断ってしまったけれど、「自分が好きで発信したものが、知らない誰かに届く」という経験にはなった。
その後、投資も始めた。
当然、資産が減ることもある。それでも投資をしていなければ、今の資産を築くことはできなかったと思うし、お金を理由に何かを諦める場面も少しずつ減ってきた。
もし今、「来月から給料を下げます」と会社から言われても、35歳のころのような焦りや恨みはないと思う。
その分、別のところで収益を作ろうと考えられるし、会社とはもっと割り切って付き合える。
僕にとってお金の安心とは、何でも買えるほどのお金を持つことではない。
いざとなったときに、自分で使えるお金があること。
35歳のあの日、青ざめるようなボーナス明細をもらったからこそ、「やるしかない」と思えた。
その意味では、気づかせてくれた会社に少しだけ感謝している。
もちろん、みんながそれをバネにできるわけではない。会社には、働く人をきちんと評価し、納得できる給料やボーナスを払ってほしい。
ただ、あの日の僕に一つだけ教えるなら、こう言いたい。
会社からもらうお金だけが、自分のお金のすべてではない。
僕のお金の不安が少しずつ小さくなったのは、収入が増えたからだけではなく、そう思えるようになったからなのだと思う。

